よくわかる行政手続き
ひな型就業規則の危険性
ネット等で簡単に手に入る『ひな形』に潜む罠
今は便利になりましたので、インターネットで簡単に就業規則のひな形を入手することができます。単に役所提出用に作成するだけなら、社名だけ変えればものの15分程度で完成します。
しかしながら、本来就業規則は一文一文よく検討して、会社の実情に合うかどうかを検討すべきものです。
明文化するということは労働者側にも就業規則を遵守するように求めることになりますが、同時に使用者側も就業規則の規定に沿うようにしなければなりません。労働者側には遵守を求めるが、使用者側は規定を無視するというわけにはいきません。
ひな型就業規則は当然、御社の実情に合わせて作成されていませんので、そのまま導入すると、会社にとってはかなり不利な条件になることも少なからずあります。就業規則は本来会社を守るために作成するものですので、その武器が自社の首を絞めては本末顛倒になります。せっかく作成した就業規則が手かせ足かせになることも実務上は多くあります。
就業規則は会社の実態にあうよう、無理なく、無駄なく作成されることをおすすめします。ただ会社の実態に合わせてかつ法律的にも違反しない就業規則を作成するには、高度な専門的な知識と経験が必要になりますので、自社独自の就業規則を作成する場合は、就業規則作成の専門家に相談しながら、作成することをお勧めします。
ひな型でよくある記載例
第1条の2
この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。
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この記載ではせっかく就業規則を作っても会社の首を絞めることになります。ほとんどの就業規則のひな形にはこのように書いています。一見何ら問題のないように思えますが…。
■問題点
就業規則に定めていないことは労働基準法をはじめ、その他の法令の定めによると記載していますと、労働基準法はもちろん、関係諸法令のすべてを熟知し、すべての規定を遵守する義務を会社が負うことになります。法律には義務ではなく、努力義務規定も多くあります。その努力義務規定のすべてを検討しなければならなくなります。これでは会社の負担が大きすぎます。
ひな型でよくある記載例2
第○条
有期契約労働者に関しては一定の条件を満たす場合、その契約を従前のとおり更新する。
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一見こちらも問題ないようですが、かなり会社側としてはリスクをおう条文になっています。
■問題点
このように記載すると条件を満たせば自動的に再更新されることになりますので、期間満了による雇止めや労働条件の変更がかなり難しくなります。
労働契約法12条には、就業規則で定める条件に達しない労働契約は、その部分について無効とし、就業規則に定める基準によると法律上決められていますので、いくら個別労働契約書や口頭で確認しても、就業規則が優先されます。これでは自社の首を絞めかねません。就業規則がかえって手かせ、足かせとなる典型的な事例です。
なお最近は、パートやアルバイトの方など有期労働契約の方も多いかと思いますが、パートだからと簡単に考えるのではなく、実は労務管理上は細心の注意を払う必要があります。実際にパートの契約更新にあたっては多くのトラブルが発生しています。
このようにひな形には一見問題がないように見えても実は極めて会社にとって不利なことも多く記載されております。条文の本当の意味を知らずに明文化してしまうことは大変危険です。
経営者の方も自社の就業規則について、よくわからないということも実際には多いです。そうならないために当事務所では経営者の方と、一文一文意味をわかりやすくご説明し、運用上の注意、その規定がないと起こりうるリスク、実際のトラブル例をご紹介しながら、就業規則を丁寧に作成していきます。