よくわかる行政手続き
就業規則がないとどうなる
就業規則が事業所にないと困ることがあります
就業規則が事業所にない場合のことを考えてみます。10人以上労働者がいらっしゃる事業所で作成していない場合は、法律に違反しますので、速やかに作成及び提出する必要があります。
※労働基準監督官が調査に来た場合は、当然違反を指摘されます。
就業規則がない場合、10人以上の会社は法違反になりますが、10人未満の会社は何も不具合がないのかいいますと、そうではありません。就業規則がないということは会社にとってはかなり不利益になることがあります。
いざ労働問題(使用者と労働者)が発生したときに、労働者は労働基準法をはじめ、各種労働法令で手厚く保護されていますので、特段何も準備していなくても法律上保護されます。
しかしながら、使用者側を保護する法律は我が国にはありません。就業規則は会社側の唯一の武器といっても過言ではありません。就業規則がないと、基本的に会社としての主張の根拠が極めて乏しくなります。
- 口約束でそうしていた!
- 実はこうなっているんだ!
- 今まではこうしてきた!
- 採用時に内諾をもらっていた!
などの主張はいざ問題が発生してしまうと就業規則等で明文化されていない以上、会社の主張としては極めて弱く、労働者側の主張がそのまま通ってしまうことも多々あります。
<よくある例>
就業規則がない事業所で、ある日新入社員がうつ病と診断され、会社をしばらく休ませてほしいと言ってきました。当然就業規則がないため休業に関する定めもありません。
最初は会社も様子見で休ませていたのですが、次々に診断書をもってきて休職期間の延長を求めてきます。会社としては替わりの人材を入れないと仕事が滞るのに、休職の状態では人材の補充もできません。本人もいつ復帰するか見通しが全く立ちません。毎月の社会保険料の負担だけ重くのしかかってきます…。
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就業規則にきちんと休職に関する定めをして(個別に同意書もとればさらによいです)おけば、このような問題の多くは大きな問題とならず解決できます。
いざというときの使用者側の唯一の武器
就業規則はいざというときの使用者側の唯一の武器と言っても過言ではありません。少し矛盾した話になりますが、就業規則は本来、労使とも存在を忘れるぐらいがベストです。(問題が起こっていないため)
多くの真面目に働いている労働者にとっては本来、就業規則というものは無縁なものともいえます。ただし労働問題が発生したとき、問題社員を採用してしまったときに御社の武器になるのもやはり就業規則であることも間違いありません。
当事務所ではむしろ10人未満の事業所(法律上は就業規則作成・届出義務はない)にこそ就業規則の作成を強くお勧めしております。
その理由は以下のとおりです。
大企業
- しっかりとした就業規則や規定を備えていることが多い。
- それに基づき判断し、毅然と対応できることも多い。
- 労務問題に対応する専門の部署(総務部、人事部、監査部など)を設置している。
- そのためトラブル対応も経営者が携わらなくともよいことも多い。
- 複数人で対応できる。
- 社員数も多いので1人ともめても代わりの人材がいる。仕事が滞らない。
- 仮に裁判になっても、時間及び多額の費用を掛けられる余力がある。
小規模事業
- 就業規則がない、またはあってもひな形を参考にしたもので不備が多い。
- 規則など基準となるものがないので、説得力や判断根拠に乏しい。
- 労務管理に対応する部署がなく、社長はじめ経営者が直接問題に対処することが多い。
- そのため経営者が仕事を中断して、トラブル対応にあたる。
- 社員数が多くないので、1人ともめると仕事に大きな支障をきたすことが多い。
- 仮に裁判になると、膨大な時間と費用負担を強いられ、会社の経営に支障をきたすことが多い。
『1,000人のうちの3人とトラブルになるリスク』
『5人のうち1人とトラブルになるリスク』
では当然後者の方がより深刻です。
当事務所のこれまでの経験からしてもこのことは間違いなく断言できます。